研究内容
Research
バイオ燃料電池
生物の力を活用した次世代のクリーンエネルギー
地球環境に優しい「クリーンエネルギー」の1つ生物発電は、生物の生きる力を利用して発電する新しい発電技術であり、身の周りの微小エネルギーから電気をつくる「エネルギーハーベスティング(※)」の1つです。エコでク リーンな夢の発電システムと言えるでしょう。
バイオ燃料電池には、自然界に存在する有機物(糖・有機酸など)を、微生物の代謝反応を利用する「微生物バイオ燃料電池」と、生物由来の酵素タンパク質の触媒反応によって効率的に分解し電気エネルギーを得る「酵素型バイオ燃料電池」の2種があります。
いずれも生物由来の化学反応を利用して発電します。発電量は決して大きくはありませんが、自然界の身近な成分が燃料となり、そこから取り出された電子は酸素に受け渡され、最終的には水が生成されます。そのため、とても安全でクリーンな発電方法です。
※エネルギーハーベスティングとは、身の回りに様々な形態で存在する未利用のエネルギー(電磁波・室内光・振動・温度差・浸透圧・生体エネルギーなど)を「収穫(ハーベスト)」して電気エネルギーに変換する技術。環境発電と呼ばれることもあります。
微生物バイオ燃料電池
微生物バイオ燃料電池は、微生物が有機物を分解する過程で生じる化学反応を利用して発電する電池です。主な燃料源としては、汚水や汚泥に含まれる有機物や、植物が光合成によって作り出した有機物が挙げられます。発電の過程では、微生物の代謝によって取り出された電子が最終的に酸素へ受け渡され、その結果として水が生成されます。生成された水は再び植物に吸収されるため、環境への負荷が非常に低く、高い循環性を持つエコな発電システムである点も特徴です。
微生物バイオ燃料電池にはさまざまな種類がありますが、特に植物の成長と組み合わせた発電方法が研究されています。例えば、田んぼ発電や植物発電では、植物の光合成によって作られた有機物を微生物が分解することで電気を生み出します。この方法は、太陽光発電のように日照に依存するものとは異なり、植物が元気に育つ環境であれば夜間も含めて24時間発電が可能です。
微生物バイオ燃料電池は発電量こそ大きくありませんが、電源供給が困難な場所での自立型電源としての活用が期待されています。具体的には、水田や植物の水分量を測定するセンサーの電源といった農業・環境管理分野での利用や、作物被害を防止するための機器の電源としての防災・防犯用途、さらにイルミネーションの電力など景観用途への応用も考えられています。

酵素型バイオ燃料電池
酵素型バイオ燃料電池は、生物由来の酵素タンパク質を電極に固定化し、その触媒反応を利用して発電します。取り出された電子は最終的に酸素に受け渡され、水が生成されるため排出物がクリーンで環境負荷が低く、安全性が高いという特徴があります。発電量は決して大きくありませんが、身近な成分を燃料にできるため、特定の用途における自立したコンパクトな電源として適しています。
ゴキブリ発電やカタツムリ発電などの昆虫の体液に含まれる糖分を燃料として発電する研究も進められており、特に生命力の強いゴキブリにこの電池を電源とする微小カメラやセンサーを搭載した災害用昆虫ロボットへの応用が検討されています。これにより、遠隔操作によって災害時の瓦礫の下など人が入れない場所の捜索に役立てることが期待されています。
さらに、ヒトの血液中の糖分であるグルコースや汗に含まれる乳酸を燃料として発電する研究は、スマートウォッチ型ヘルスケアデバイスの電源としての利用が想定されています。人工心臓や人工すい臓などの体内埋め込み機器用電源としての活用も期待されており、これからの超高齢化社会においてAI医療やデジタルヘルスケアを支える基盤技術となる可能性があります。

自然界の生物発電
「デンキウナギ」「デンキナマズ」「シビレエイ」などの電気魚は、筋肉の変形物として発達した発電器官(発電板細胞)をはたらかせ、神経や筋肉の活動に伴って電流を体外に放出します。これらの電気は自己防衛や環境探知(障害物や獲物を探す)あるいは仲間同士のコミュニケーションのために利用されます。
「デンキウナギ」の場合には、直列に積み重なった数千個の発電板細胞をつかい、瞬時に800Vにも達する強力な電気エネルギーを発生させることもできます。▶シビレエイ発電
※ ヒトを含む多くの動物も、神経細胞の情報伝達や心臓の拍動に、活動電位(一過性の膜電位:数十mV)の変化を利用しています。

※「ホタル」「ホタルイカ」「オワンクラゲ」などの光は、これらの生物が作りだす酵素タンパク質の化学反応による「化学発光:ケミルミネッセンス」の1種「生物発光:バイオルミネッセンス」です。化学反応により生じたエネルギーが光として放出される現象で、電気をつくって発光しているわけではありません。
